専門里親廣岡綾子さんの裁判を支援し、社会的養護の問題解決を考える会結成へ向けて ― 2014/07/26
呼びかけ人 福田 和子(新婦人の会)、廣岡 逸樹(原告夫)、村中 李衣(児童文学者)、佐野 太(牧師)、横山真佐子(翻訳家、児童書専門店経営)、清水 満(グルントヴィ協会幹事)
2011年年12月、専門里親である廣岡綾子さんは、行政機関(萩児童相談所)が里親を乱用し著しく傷つけたとして、山口県知事を相手に裁判を起こしました。それは管轄の萩児童相談所から充分な説明もなく、また里子にとっても良いと思えない一方的な判断により、突然里親子関係を断ち切られ、夫婦ともども心身ともに変調をきたすほど大きな精神的ダメージを受けたため、国家賠償法に基づく慰謝料請求を行ったものです。 廣岡綾子さんご夫婦のように、児童相談所の独裁的な権力行使により傷つけられている里親が多く存在することは厚生労働省の調査などによっても明らかになっており、日本全国各地で今も起こっていることなのです。その日本の不十分なシステムをよいものに変えていくために多くの人々に知っていただき、社会的に弱い立場にある社会的養護の子ども達が安全に安心して暮らせる地域社会を作っていきましょう。 4年間にわたり育てていた里子(当時小学校6年生)が、実母と面会後書いた実母宛の手紙をきっかけに、「28条(家庭裁判所の決定による里親委託)も視野に入れて実母との交渉をするために、山口市内の一時保護所に一時保護する」(これは嘘であったことが被告準備書面から明かになりました。)ということだったので、学期の途中でありながら、大事なことだと思い、綾子さん夫婦は同意し、里子は一時保護の話のあった翌日には里子は一時保護所に保護されました。 綾子さん夫婦は、気になりながらも、「児童福祉法第28条も視野に入れて親と交渉する」という児童福祉司の言葉を信じ里子がもどって来るのを待っていたところ、2週間も何ら連絡もなかったあげく、納得できるような説明もないまま一方的に里親委託を解除し、情緒障害児治療施設に措置変更をされてしまいました。それが、2010年10月のことでした。 背景には、一緒に暮らし始めてから2年近く経って、信頼関係ができてきた里親に対し、やっとの思いで里子が話してくれた児童養護施設入所中に受けた職員からの虐待(里親が聞いた時点では4人でした)を萩児童相談所に「施設内虐待の通告」として、里父である廣岡逸樹が行ったことがあると考えています。虐待の通告を受けた担当児童福祉司は、里子から5人の施設職員から体罰をされたことを聞き取りしましたが、その後まともな調査は全く行わず、施設内虐待の通告数は国への報告義務があるにも関わらず報告しておりません。また、里子に対しても結果の報告を何もしていません。児童養護施設を指導し、子どもを支援すべき児童相談所の役割を果たしていないことになります。 2014年8月6日(水)16:00から第17回の口頭弁論が非公開で行われる予定です。その後もう一度非公開で行われ、その後10月以降公開で行われるようになると思われます。
①児童相談所から里親が一方的権力の行使によって傷付けられることがなくなるようにという願い (里親には里子に関して一切の権利はないと山口県は主張しています。今までの口頭弁論の中で、萩児童相談所は、「里母は母性愛が足らない」という非常に侮辱的な考えをしていたことが明らかになりました。その根拠を示すように今後求めていきます。また、私たちは、子どもからの施設職員からのさまざまな暴力の訴えを無視し続ける県職員のほうこそ全く子どもへの愛がない、これは、子どもの声を無視し続ける「ネグレクト」という児童虐待そのものを行ったのだと私たちは考えています。) ②児童相談所が、社会的養護の子どもたちの意見を無視することなく、子どもの最善の権利を守る機関になってほしいという願い (児童福祉司という子どもを守るべき立場にあるソーシャルワーカーが、子どもの意見を無視することは犯罪にも匹敵する行為です。これは、子どもの権利条約を批准した民主主義国家の常識ではないでしょうか。)
このふたつの願いを胸に、廣岡綾子さんご夫婦はこの裁判を闘っています。
また、当時の萩児童相談所の職員2名(業務課長、担当児童福祉司)は、その後も情緒障害児短期治療施設の職員ないし教員から淫行罪相当の行為をされ続けていると訴えた16歳の少年の訴えも門前払いにし、闇に葬っています(2010年12月)。子どもの最善の利益を守るための行政組織の職員として、決してやってはいけないことをやり続けていることになります。
また、さかのぼれば1996年にも山口県内の他の児童相談所が「性的施設内虐待」の子どもからの訴えを隠蔽しています。『意見表明権』を高らかに謳った「子どもの権利条約」を1994年に批准している私たちの国日本で、自分たちの名誉や地位を守るためだけに、20年近くもっとも弱い立場にある社会的養護の子どもたちの声を無視し、乱用し続けたことになるのです。この行政の罪は非常に重いと考えています。もし子どもたちが言ったことがそのとおりの事実であれば、刑法犯罪者が罪を償わずに、その後も羊の皮をかぶって子どもたちと接し続けていることになるわけです。そのことは、即ち今後もこの山口県内で同じような子どもに対する「施設内虐待」が必ず起こるということを意味します。何としても食い止めねばなりません。 子どもの権利条約批准20周年の今年、山口県福祉行政の隠蔽体質を市民の力で改善し、子どもの権利が尊重され、子どもたちが安心して健やかに暮らしていける地域社会を作るために、以下の3つの目標を掲げて、活動を開始したいと思います。
目標 1 裁判中の廣岡綾子さんを支え、日本の里親の権利を明確にしていく活動を行う。 2 児童相談所職員が、「子どもの権利条約」を充分に理解し、真に子どもの最善の利益を実現する職員となるように十分な研修を行い児童福祉の専門性を高めるとともに、怠った場合の職員の罰則規定を定める。 3 社会的養護の子どもたちのための独立的アドボケイト機関を設立する。
(用語の説明) 〇社会的養護 社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。 社会的養護は、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として行われています。(厚生労働省 ホームページ)
○児童福祉法第28条(保護者の児童虐待等の場合の措置〕 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。 一 児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。 二 児童又はその保護者を児童福祉司、精神薄弱者福祉司、社会福祉主事又は児童委員に指導させること。 三 児童を里親若しくは保護受託者に委託し、又は乳児院、養護施設、精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設、盲ろうあ児施設、虚弱児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設若しくは教護院に入所させること。 四 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。 都道府県知事は、少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、第一項の措置をとるにあたっては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。(以下省略) ○アドボケイト機関 「アドボカシー(advocacy)」とは、社会的弱者、マイノリティー等の権利擁護、代弁の他、その運動や政策提言、特定の問題に対する政治的提言、保健医療 社会環境での性差撤廃、地球環境問題など広範な分野での活発な政策提言活動を指している。社会的弱者である「社会的養護」のこどもたちの代弁ができる独立した組織がないことが、絶対的権力を持った児童福祉行政組織の隠蔽体質、事なかれ体質を生んでいる。
廣岡夫妻の裁判がもつ意義 ― 2014/07/26
すでにお知らせしたように、協会会員の廣岡逸樹さん(山口県長門市、SOS子どもの村JAPANスタッフ、元山口県児童相談所職員、前児童養護施設長)と妻の綾子さんは、山口県を相手に裁判を起こし、三年目に入ります。 お二人は里親として子どもさんをあずかり、虐待などで心理的な影響を受けた少年を誠心誠意ケアしてきましたが 、里親を取り消され、里子を児童福祉施設に入れられるという一方的な対応(措置変更)を担当児童相談所から受けました。廣岡さん夫妻が、児童福祉施設での体罰、児童への性的なハラスメントなどを告発してきたことが一因と考えられます。この措置の不当性、および里親である綾子さんへの精神的なハラスメントを訴えています。 幹事の清水は、この間支援の準備をする中でいろいろ調べていくと、この裁判は日本の児童福祉を考える上で、きわめて大きな意義をもつことに気づきました。まったく無知は重大な問題を看過させるものだと恥じ入ります。私見によれば、この裁判が指摘する問題は以下の通りです。
1,日本において最も弱い立場におかれている子どもたちが絶対の孤立状態におかれている。 現在、児童養護施設に入所している子どもたちはほとんどが被虐待児で、親からの虐待を防ぐために、施設に保護されています。幼い頃から、親からの身体的・精神的暴力を受け、心がボロボロといえるような状態にあります。 保護してくれるはずの施設に入ると、今度は職員から暴力、ときには性暴力を受ける子どもたちが少なからずいます。助けをもとめる親はあてにならず、保護してくれるはずの施設の職員からも、施設の管理にしたがわないと暴力を受けます。まだ精神的に十分に成長していない子どもたち、他者からのケアが必要な子どもたちが、絶対の孤立状態に置かれています。 子どもたちは、やむなく職員などに従順になり、暴力による管理を受け入れこととひき換えに、自分の判断力、意思を抑圧し、深い精神的な傷を負うことになります。とりわけ精神的に未熟な子どもたちが性的な暴力を受けることはとりかえしのつかない心的障害を与え、人権侵害の最たるものです。
2,「タイガーマスク」運動などによる施設の神話化 日本の児童養護施設の多くは民間施設で、宗教団体や篤志家が孤児たちを支援するために始められた歴史をもちますが、それらのエピソードが一人歩きして「神話」になっています。児童のために日々努力するスタッフと不幸な境遇にありながらけなげに生きる子どもたちというイメージに拍車をかけたのが、ランドセルを送るタイガーマスク現象です。これ自体は善意のすばらしい試みであっても、マスメディアによってそれが美談として喧伝され 、児童養護施設が美化されることで、一般の人たちの関心がそこで止まってしまいます。ありのままの児童養護施設の姿を認識する機会が失われ、専門家がやっている自分たちとは関係のない領域として視野から外されるのです。 現実の児童養護施設は、世襲による継承、経営の論理で動いていることが多いとされています。補助金削減などに伴い、少ない人員でケアするために、強制的な管理に頼らざるをえず、また無理な体制が生み出すひずみが暴力となって、弱い存在である子どもたちに向けられるという構造があります。 児童相談所と施設は相互依存している関係があり、措置児童の入所先確保のためには問題があるとされる施設に入れざるをえない、あるいは問題をあえて見過ごすというなれ合いが批判されています。行政のチェックが有効に機能していないのです。 これが学校であれば、ほとんどの親が子どもを通わせ、当事者となるので、いじめ問題など国民の関心は高く、世論によるチェック機能もある程度働きますが、児童養護施設にかかわる国民は数的には多くないために、第三者のチェックも十分には機能していません。
3、施設依存と里親 日本の社会的養護の子どもたちの多くは児童養護施設で生活します。子どもたち、とくに年齢の低い子どもたちには特定の養育者との十分なアタッチメント(心理的、身体的接触)があることが望ましいので、本来は里親による支援が一番ふさわしいものです。しかし、日本の児童福祉は施設中心で、しかも比較的規模の大きい施設が多いと いう現状があります。 日本で里親の数が少なく、里親への関心が低いのは、伝統的に子どものない夫婦が里親からスタートして将来的に養子縁組をするというイメージがありました。養育環境を奪われた子どもたちを一時的にケアし、社会的な養育環境の一つとしての里親、誰もができる家庭での児童ケアという理解が欠けていたのです。 廣岡綾子さんと逸樹さんは、児童福祉の現場にいる者として、仕事以外にも、子どもたちには家庭でのケアが最善であるという確信の下に、里子を引き受けケアしてきました。日本社会に欠けている社会的養護の一端を担ってきたのです。 廣岡さんたちの裁判を支援していくことは、日本の社会福祉が軽視してきた社会的養護、普通の人たちができる子どもたちへ のケアを社会全体で支えていくという考え方の理解と普及をしていくことになります。廣岡夫妻だけではなく、各地にいる児童福祉を充分に理解した里親たちとの連帯にもつながる重要な意義があります。
グルントヴィ協会はデンマークの教育運動と連帯し、子どもたちの幸福を願う試みをする人たちのネットワークでもあります。現在、目の前にいる日本の子どもたちが幸福に生きる権利を侵害され、暴力(性暴力を含む)に脅える現実があるとすれば、看過することはできません。この裁判を通じて、理解を深め、可能なかぎり、行政や施設にそのような体罰や子どもへの人権侵害がないように要求し、社会に明らかにしていかなければなりません。一部の良心的な児童福祉関係者、里親たち内部での努 力という狭い専門領域にとどまれば、何よりも子どもたちに必要な将来の生活設計を含む社会的で包括的なケアの実現にはつながりません。 あと二回程度非公開での審理のあと、秋に第一回目の公判があります。廣岡さんの裁判を支える会を公判に向けて結成すべく、以下の日程で準備会議をすることになりました。すでに1月に福岡、4月に下関で会合を重ねており、今回は三回目の会合となります。傍聴や裁判費用のカンパなどを行う支える会の発足と当事者である県に対する直接行動計画などを話しあいます。関心のある会員のみなさんに、ぜひ参加していただきたいと思います。
廣岡夫妻の訴え ― 2014/02/02
独裁的行政組織を民主主義的組織に変えていくための非暴力的闘いに力を貸してください。
2011年12月、里親である私たち夫婦は、行政機関(萩児童相談所)が里親を乱用し著しく傷つけたとして、山口県知事を相手に裁判を起こしました。それは管轄の萩児童相談所から私たちに充分な説明もなく、また里子にとっても良いと思えない一方的な判断により、突然里親子関係を断ち切られ、夫婦ともども心身ともに変調をきたすほど大きな精神的ダメージを受けたため、国家賠償法に基づく慰謝料請求をしたものです。原告は専門里親である妻になっています。私たちは、これを「専門里親乱用裁判」と呼んでいます)
私たちのように、児童相談所の独裁的な権力行使により傷つけられている里親が多く存在することは厚生労働省の調査によっても明らかになっており、日本全国各地で今も起こっていることなのです。その日本の悪いシステムをよいものに変えていくためにも、まず多くの人々に知っていただきたいと思っています。
4年間にわたり育てていた里子(当時小学校6年生)が、「児童福祉法第28条も視野に入れて実母との交渉をするために、山口市内の一時保護所に一時保護する」(これは嘘であったことが被告準備書面から明かになりました。)ということだったので、学期の途中でありながら、大事なことだと思い、私たち夫婦は同意し、翌日には一時保護所に保護されました。
私たち夫婦は、気になりながらも、「児童福祉法第28条(家庭裁判所の決定による里親委託)も視野に入れて親と交渉する」という児童福祉司の言葉を信じ里子がもどって来るのを待っていたところ、2週間も何ら連絡もなかったあげく、私たちが納得できるような説明もないまま一方的に里親委託を解除し、情緒障害児治療施設に措置変更をされてしまいました。それが、2010年10月のことでした。
背景には、里子が私たちに話してくれた児童養護施設入所中に受けた職員からの虐待を、萩児童相談所に「施設内虐待の通告」として、里父である廣岡逸樹が行ったことがあると考えています。虐待の通告を受けた担当児童福祉司は、里子が5人の施設職員から体罰を受けたことを本人から聞き取りしましたが、まともな調査は全く行わず、国への統計的は報告もなく、また里子に対しても何の報告もしていません。児童養護施設を指導し、子どもを支援すべき児童相談所の役割は果たされていません。
2014年1月22日、11時から山口地方裁判所において、第13回目の口頭弁論(非公開)が行われます。担当弁護士からも、「行政相手の裁判は、正当な理由があっても勝てない」と当初から言われながら、
①児童相談所から里親が一方的権力の行使によって傷付けられることがなくなるようにという願い。 ②社会的養護の子どもたちが意見を児童相談所に言ってもその意見を全く無視してしまうことが今後二度となくなり、子どもの最善の権利を守る機関になってほしいという願い。
この二つの強い願いを抱きながら闘ってきました。 私たち夫婦の裁判は今年中に一審の判決が出るものと思われます。
里親との民主的な対話を一切せず、里親が傷つくような行政処分を一方的におこなったこと、「施設内虐待」の通告をしても、今までの児童養護施設との悪しき馴れ合い関係から、調査すらせず隠蔽するようなことが、今後二度と起こらないように、非暴力的な闘いを多角的に行っていきます。
萩児童相談所の職員2名は、その後も情緒障害児短期治療施設の職員から淫行罪相当の行為をされ続けていると訴えた16歳の少年の訴えも門前払いにし、闇に葬る(2013年12月)など決して許してはいけないことをやり続けました。
『意見表明権』を高らかに謳った「子どもの権利条約」を1994年に批准している日本で、自分たちの名誉や地位を守るためだけに、10年以上にわたってもっとも弱い立場にあるといえる社会的養護の子どもたちの声を無視し、乱用し続けたことになります。この行政の罪は非常に重いと考えています。(もし子どもが言ったことが事実であれば、刑法犯罪者が罪を償わずに、その後も羊の皮をかぶって子どもたちと接し続けたことになるわけです。)
1月22日の口頭弁論の報告会を行います。今回の出来事は判決が出たから終わりではありません。むしろその後の非暴力的闘いがより重要になってくると考えています。皆さま方の多くのお知恵を借りし、その準備を始めたいと思っています。
2014年1月5日 廣岡綾子・逸樹
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